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国産Tシャツを着る意義と、おすすめメーカー3選
ビジネスのありとあらゆる側面でグローバル化が進む昨今、アジア諸国の台頭もあって、電化製品や車など様々な製品における「MADE IN JAPAN」のブランド力は昔ほどの勢いは無いように伺えます。
そんな時代だからこそ、国内市場の事情を知り、国内生産のTシャツを着ることには意義がたくさんあるように思えます。
今回は、日本の衣類業界の現状を紐解きながら、今だから価値を見いだせる国内生産のTシャツについてご紹介します。
アパレルの国内生産は激減
そもそも日本で販売されている衣類は97%が海外で生産されている
国内で流通する衣類のうち、日本製の衣類が占める割合はたったの3%にとどまっています。逆に言えば、日本で販売されている衣類の97%が海外生産品。海外生産品がここまでの割合を占めるようになった要因は複雑です。
国内供給量、生産量、市場の推移
(出典を元にarkhēが作図)
衣類の国内供給量は21世紀初頭から頭打ちで、大きく増減していませんが、国内市場は縮小傾向にあり、それに伴って国内生産の割合も大幅に減少していることがグラフからわかります。
輸入浸透率という言葉があります。日本国内で生産された製品と、輸入された製品の合計から輸出される製品を引いたものを分母として、輸入品を割った数値のことです。簡単に言えば、国内流通品のなかで輸入品の割合を示す値のことを言います。この輸入浸透率が、2014年時点では97%でした。それは国内で生産されるメイドインジャパン製品が3%ほどしかないことを意味します。
国内で生産しない理由
このような現状に至ったのには以下のような理由があります。
単純に海外生産のほうがコストメリットがある
アジアの発展途上国では、土地代、人件費などの物価が安いため、海外生産を行うほうがコストが掛からないというのは明白な事実でしょう。
もはや当たり前となったファストファッションブランドは、まさに低賃金の工場が可能にしているビジネスモデルです。トレンドを程よく抑えながら、非常に低価格なファストファッションブランドはまたたく間に大衆に受け入れられ、衣類の単価を下げ、国産品のシェアを奪うこととなりました。
中国、タイは進出が当たり前、ベトナム、インドネシアといった国での生産も増えてきている
一昔前までは、安い服=中国製というのが常識でしたが、現在はベトナムやインドネシア、カンボジアなどの東南アジア諸国、更にはアフリカの国々で製造された衣類が増えています。
中国の目まぐるしい経済成長で、中国国内の賃金も上昇しており、低賃金労働力を求めるメーカーは次々に更に後発の途上国へ工場を移しています。いまでは中国にもノウハウが溜まってきており、むしろ少し良い海外ブランドの生産地となりつつあるほどです。
国産品の魅力
このような現状で、なぜ日本製を買うべきなのかには大きく分けて4つの理由があります。
優れた技術・生地によって高品質なプロダクトに仕上がる
中国を始めとするアジア諸国での生産が、必ずしも低品質を意味するわけではありませんが、少なくとも日本製を凌ぐことはなかなかありません。現在日本で生き残っている工場は、縫製や生地において世界トップレベルの技術を誇ります。例えば、和歌山県にある島精機製作所は、ホールガーメントニットウェアと呼ばれる縫い目のない立体的に編まれたニットを製造しています。世界唯一の技術であり、エルメスやグッチなど名だたる欧州のメゾンから注文が殺到しています。
日本人の体型に合った”似合う”プロダクト
欧米には名だたるブランドがたくさんありますが、日本人の体型を知り尽くしているのは、やはり日本のブランドです。一般に欧米のブランドは背の高い欧米人の体型に合わせて、トップスの着丈が長い傾向にあります。また、臀部の形も異なるため、パンツのヒップのパターンも日本人には合いづらいのが現状です。長い丈は短くすることもできますが、本来のバランスが崩れてしまいますし、お直しには時間も費用もかかります。
翻って日本のブランドは、メインターゲットが日本人なので、日本人の体型に合わせて服のパターンが引かれているため、そのままで着ても様になりやすく、また欧米人に劣る部分をきれいにカバーしてくれる服が多いです。
日本での雇用、技術承継への貢献
日本が誇るものづくりですが、日本での事業所数は減少の一途をたどっています。1990年代と比べると、事業所数は1/4に減少しています。日本独自の技術も、需要がなければ海外企業に買収されたり、消滅したりしてしまいます。日本刀の技術などは、需要がなくなったことで失われたテクノロジー(ロストテクノロジー)と云われています。日本が誇る衣類の技術を次代に伝えていく、技術継承、雇用促進と言う側面でも、日本製を買い求める価値があるのかもしれません。
倫理的な消費
倫理的な消費という概念があります。
単に値段や自分にとって都合がいいかといった面で消費を行うのではなく、環境負荷や社会貢献などを意識した消費のことで、欧米を中心に先進国で広がりを見せており、特に服飾の消費に関してはエシカル・ファッション(倫理的なファッション)と呼ばれています。
ファストファッションは、消費者の立場にたてば都合のいい存在ですが、その安さの背景には安い賃金、劣悪な環境で服を作っている途上国の人々の悲しい現実があります。実際に2013年にバングラデシュで、建築水準を満たしていない違法な工場ビルが倒壊し、1100人以上が亡くなる事故が起きています( https://hushtug.net/note/secret/ )。その受注元に先進国のファストファッションブランドが含まれていたことから、安さを追求するビジネスモデルに批判が相次いでおり、日本のファストファッションブランドも人々の怒りの矛先にあります。劣悪な労働環境でつくられた安い服ではなく、労働者の人権が確保された工場で作られた服を買うという選択をすることが、先進国の消費者の責任であることを否定することは出来かねます。
長期の不景気も落ち着きを見せており、消費者の安さに対する執着は緩やかになりつつあります。実際に国内衣料品の商品あたりの単価は2010年以降少しずつですが上昇しています。
2013年4月24日 事故で倒壊した工場ビル

http://bangla-business-partners.com/
国産Tシャツの工場・生地で有名な地域
工場
新潟
ニット生産量日本一の新潟は、カットソーの生産地としても有名です。たくさんのブランドからのOEMを受注している工場が沢山存在しているため、生産ノウハウが蓄積されていることで、質の高いカットソーが生産されています。
東京
東京の下町地域には、たくさんのカットソー工場が存在しています。特に江戸川区などには、CADなど最新の技術を用いながらも質実剛健なものづくりを続けている企業が複数存在しています。
生地
静岡
浜松の遠州地域は、ふんわりとした綿素材を中心とする多種多様な高品質素材の産地として有名です。カラミ織りと呼ばれる折り方で織られたレノクロス生地の生産量一位などを誇り、生地の総合生産地として名を馳せています。
◾国産Tシャツのブランド一覧
arkhē(アルケー)
「大人が着るにふさわしい、無地のTシャツ」をテーマに、品質、素材、シルエットに拘った日本製のTシャツ専業ブランドです。上質な糸を低密度で編む生地を用いることで、通気性と高級感を両立させ、一枚で着ても肌着としても着られる高級なTシャツを生産しています。シルエットに関しても、日本人の体型に合う、絶妙な着丈や身幅を実現するためにミリ単位での試行錯誤を重ね、完璧なバランスに仕上がっています。
なかでも最も特徴的なのは、その価格帯です。卸売業者や小売業者を介さず、直接販売を行う「ダイレクトセールス」方式を採用しており、中間マージンが発生しないことで、「適正価格」を実現しています。具体的には、この後紹介する他の日本のブランドや、高級とされる高級ブランドのTシャツと同程度の品質を確保しながらも、半額程度での販売を可能としています。
直営オンラインストアでの販売で、値段は税抜きで5500円からとなっています。
フィルメランジェ

http://filmelange.com/collection/
2007年に東京で誕生した、「究極のカットソー」ブランドであるFilMelangeは「混ざった色の(Melange)糸(Fil)」という意味であり、それは昔からカットソーに使われてきた杢色の糸のことを示しています。誰にでも似合う色合いの商品を作り上げていることが特徴で、原料の選定から縫製に至るまで自社開発にこだわり、自社工場による日本製を貫いています。
上質かつリラックスした雰囲気の生地と縫製によって大人の休日技にぴったりなカットソーを作っており、Tシャツは柔らかくありつつもクタクタしません。デザインもシンプルなので、どんなスタイルにも馴染んでくれます。Tシャツは9000円から用意されています。東京の神宮前に直営店を構えているほか、セレクトショップやZOZOTOWNなどでも取り扱いがあります。
旧式の吊るし編み機を用いた型くずれしないTシャツ

http://www.housefilmelange.com/
atelier comopti(アトリエコモプティ)

http://ateliercomopti-blog.blogspot.com
atelier comopti(アトリエコモプティ)は東京で展開しているブランド。Tシャツを、「最も身近な外装」と定義し、他より少し拘った上質なTシャツを着ることで、一日を幸せに生きることをコンセプトにしています。
Comoptiには、「組合せ最適化」という意味が込められており、原料、加工、パターン、縫製などTシャツが出来上がるまでのすべての工程に拘ることで、オケージョンに最も適したTシャツを作ることを目指します。上質ながらも、洗濯機でガシガシ洗える、まさにちょうどいいTシャツを作っています。
Tシャツは11000円から用意されています。青山にあるCIRCLE、BARNEYS NEWYORKなどのセレクトショップでの取扱いのほか、自社サイトでのオンライン注文も可能です。
まとめ
日本製のTシャツは、今となっては貴重な存在となっています。その価値は単に「珍しい」というものではなく、日本が誇る緻密な技術力によってのみ実現される生地や縫製、日本人の体型に合うシルエット、そしてエシカル・ファッション(倫理的消費)といった社会的側面に至るまで、語り尽くせないほどたくさんあります。
ただただ安い消費財、消耗品としてではなく、自らのアイデンティティや上質なライフスタイルを表現するアイテムとしてTシャツを選ぶ際には、日本製のものを選ぶのが最適解かもしれません。
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