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最高品質のシャツファブリックメーカー「THOMAS MASON(トーマス メイソン)」について
トーマスメイソンは1796年、英国のランカシャーという地域で創業したシャツ生地メーカーです。ロイヤルワラント(英国王室御用達)を享受する、伝統的で由緒正しいブランドとして認知され、英国が誇るシャツ生地の名門です。
長い歴史を持つトーマスメイソンがどのように今日に至るか辿りながら、最高品質と言われる生地とはどのようなものかご説明していきましょう。
トーマスメイソンの歴史
1796年、英国・ランカシャーに最初の綿ファブリック工場の一つを設立。当時、最高品質と評された生地は貴族階級と豊かな上層階級のためにウェスト・エンド・ロンドンの仕立て屋で使用され、後には大英帝国全土と世界各地に輸出されるようになりました。
1850年、ビクトリア時代には大英帝国最大の拡大を記録し、ロンドンのセント・ジェームズ地区では靴や傘、帽子に加えシャツメーカーがジャーミン・ストリートに集中し、この小さな通りが世界のシャツの中心となり多くの人が新しいものを求め集まりました。
1901年、ビクトリア女王の死と1914年に第一次世界大戦が始まったことで国民の社会的、経済的な生活は激変。トーマスメイソンも戦争に貢献するよう命じられ、耐水性のある綿、火災などに耐性を持たせる面など密接に織られた綿生地を開発し、多くのヘリコプターや浸水パイロット隊員の命を救ったと語られています。
1936年、トーマスメイソンは英国王室御用達のシャツメーカーであるTurnbull&Asser(ターンブル&アッサー)の独占的なサプライヤーとなりました。
着心地の良さや新鮮な色使いがその時代のファッションの基本となりました。今やシャツ生地の定番でもあり、不動の人気を誇るロンドンストライプ(ロンストと呼ばれることが多い)はこの時期にターンブル&アッサーが発表したものです。
1960年、ロンドンはファッション革命の中心となり、ビートルズを始めとする若者ファッションが一世を風靡し、大きな変化を期待させました。伝統的な英国人の優雅な着こなしも脚光を浴び、先端を行くスタイリストがサヴィル・ロウやジャーミン・ストリート、カーナビー・ストリートの橋渡しを果たしたそうです。
この時代を象徴する幅広のネクタイであるキッパータイとシャツの組み合わせが大流行し、トーマスメイソンの生地が多用されたことは言うまでもありません。
1991年、トーマスメイソンの歴史と膨大で貴重なアーカイブに陶酔したイタリア/ベルガモのAlbini(アルビニ)社によって買収されました。アルビニ社はイタリア3大ファブリックメーカーの一つで、100年以上高級シャツの製造業者として最新の技術を駆使し続けています。買収にあたって伝統と最先端技術の融合を成し遂げたと評価されました。
トーマスメイソンはこの買収を機に、生産拠点をイギリスからイタリアへ移しています。トーマスメイソンは買収された後であっても英国御用達ブランドであり、ターンブル&アッサーなどの仕立てシャツ店の多くが現在もトーマスメイソンをメインサプライヤーとして取り扱っています。また、世界のセレブに顧客が多く、上質を求める英国生地の伝統に基づき生産された最高級の生地が、ゆるぎない地位と支持を得ています。
トーマスメイソンが作る生地とは
トーマスメイソンが得意としているのは100番手から140番手程度の細番手で、高級ゾーンにあたります。艶やかながらしっかりした糸使いで堅実な色使いが特徴です。
生地の番手は糸の太さを表す単位で一定の重さ当たりの長さを示すものです。番手が上がるほど光沢が増し、美しくしなやかな生地になります。繊維は一般的に細いものほど優良であるとされます。綿花を細く糸に紡績するには、繊維が長い超長綿を使用しなければ生地が作れないため、原価の高い超長綿を使用することで高級なモノになるということです。トーマスメイソンでは最高級であるエジプトのGIZA45とGIZA87から得られた超長綿を使用しています。
糸が細いと生地が薄く耐久性がないのではと思われる方もいるでしょう。
1本だけですと確かに弱いですが、2本を撚り合わし双糸にすることで太い糸よりも丈夫な糸になります。生地ナンバーの下に140/2と言うような表示がありますが、これは使用している糸の番手を表しており、この場合、140番双糸を使用しているという意味になります。
一般的なシャツでは50番手の綿糸が使われることが多いため、トーマスメイソンのシャツがいかにしなやかで柔らかいか想像がつくでしょう。綿100%ながらシルクのような手触りなのです。
トーマスメイソンのコレクションにはシルバーラインとゴールドラインがあります。
シルバーライン
シルバーラインは1992年に生まれ、伝統的な英国の手法で作られています。100番手と120番手双糸のコレクションのもので、特別なひねりと伝統的な仕上げ方法の組み合わせにより独特の光沢と柔らかさを実現。細番手ながらしわになりにくいのが特徴で、アイロンかけも簡単で最高の品質と実用性を兼ねています。そのことからビジネスユース用のシャツとして人気を博しています。
ゴールドライン
ゴールドラインは140番手の最も細番手を使ったコレクションで、1996年の同社の200周年記念式典のために作られました。通常、140番手はただ柔らかく扱いが難しいのですが、ゴールドラインは140番双糸に紡績し織られており独特のテンションで腰のある仕上がりが特徴です。最高品質の評価を受けるゴールドラインはフォーマル用のシャツに適しています。
スタイリッシュなスーツの着こなしには美しいシャツが欠かせません。良いシャツを合わせてこそ完成するのがスーツスタイルです。トーマスメイソンの生地を使用したシャツが選ばれることに疑いはなく、1枚購入された方が2枚目、3枚目と色や柄を変えて購入されるケースが多いことに納得します。
オーダーシャツを手掛けているショップでトーマスメイソンの生地をインポートしている所は世界中にあります。その中で同社が「最高品質」と認めたオーダーシャツにのみ付けることが許される「BESPOKE」という織りネームラベルと裾につけるピスネーム(ガゼット)があります。日本でこの認定を受けられた会社は数社しかないとのこと。トーマスメイソン社が徹底したブランド管理を行っており、認定した会社に対してイタリアから1着分からでも空輸されるほどです。
さらに、トーマスメイソンはドレスシャツの枠を超え、世界中を席巻するストリートブランドや、日本の著名なドメスティック・デザイナーズブランドなどへも生地を供給するようになりました。名門シャツメーカーのハイクオリティな生地に触れられる機会が広まっています。
以下では、トーマスメイソンが生地を供給しているブランドをいくつかご紹介しましょう。
トーマスメイソンの生地を使用しているブランド
・Graphpaper(グラフペーパー)
Graphpaper Thomas Mason Oversized B.D Shirt \28,600(税込)
グラフペーパーは1LDKやCANNABIS(カンナビス)などの有名セレクトショップを手掛けた南貴之氏がディレクターを務めるセレクトショップでありオリジナルブランドの名称。メンズは元よりレディースアパレルや様々な有名ブランドとのコラボによるアイテムもリリース。オーセンティックで普遍的な大人の上質なスタンダードアイテムを提案しています。
グラフペーパーの定番レギュラーシャツには毎シーズン、トーマスメイソンの生地を使用しており、発売すればすぐに売り切れる人気商品。超長綿の細番手で織り上げたブロードクロスを使用し、オーバーサイズなボックスシルエットのボタンダウンシャツです。ゆったりした着用感がこなれた大人の雰囲気を出す1枚です。
・BROOKS BROTHERS(ブルックスブラザース)
Broocks Brothers Luxury Dress shirts 120/2×120/2 \20,900(税込)
ブルックスブラザースは1818年に創業した、アメリカで最も歴史のある衣料ブランドです。NO,1サックスーツ、ポロカラーシャツ、ポロコートなどブルックスブラザースが生み出した商品は世界中の人々に愛用されるアイコニックなアイテムになりました。リンカーンやケネディなどの歴代米大統領からフレッド・アステア、アンディ・ウォーホールなどの有名人、POPスターからハリウッドスターまで多くの有名人が顧客リストに名を連ねる不動の人気を誇るブランドです。シャツコレクションには上質なトーマスメイソンの生地を採用し、目立たないステッチやディティールなど細部までこだわり、丁寧に仕立てられています。最高級のエジプシャンコットンを使用し、120番双糸の細かなピケ織りの美しい生地を使用。ワイドなフランクリンスプレッドカラーのシャツはスーツスタイルをおしゃれに演出し、ブルックスブラザースの特徴的なデザインのネクタイにもぴったりです。
・Luigi Borrelli(ルイジ ボレッリ)
Luigi Borrelli コットンポプリンセミワイドカラーシャツ/LUCIANO \38,500(税込)
ルイジボレッリは1957年創業のイタリア/ナポリの老舗シャツブランドです。当時、平面的で硬い縫製のシャツしかなかった時代に人体を研究し、ミシンとハンドワークを使い分けながら最高の着心地のシャツを完成。熟練の職人がゆとりを持たせながら丁寧に縫い上げるハンドメイドのシャツはナポリシャツの代名詞として世界中で愛されるようになりました。
ルイジボレッリは、繊細かつエレガントな見た目に加え、第二の皮膚のように優しく触れる快適さを求め、アルビニ社のトーマスメイソンとデイビッド&ジョンアンダーソンのシャツ生地を採用しています。
“世界で最も美しいセミワイドカラー”と称されるルイジボレッリのシャツ衿の名称である「LUCIANO(ルチアーノ)」は細身のスーツが主流になっている今の時代に合わせてアップデートされ、ネクタイのノットがすっきり納まる設計。ノーネクタイでもおしゃれに着れるイタリアらしい色気と艶を感じさせます。
トーマスメイソンのシャツはシワになる?
トーマスメイソンの人気定番生地である細番手のポプリン織りは上品な光沢と高級感があり、シルクのような肌触りです。柔らかい素材ながら糸のテンションが強く生地にハリを持たせているため、1日中着ていてもシワになりにくく耐久性があり長持ちします。ポプリンのクオリティに相当なこだわりを持つトーマスメイソンならではの最高級の生地が、ルイジボレッリのシャツを唯一無比のモノにしていると言っても過言ではないでしょう。
トーマスメイソンのシャツをより長持ちさせるお手入れ方法
お手入れは難しくありません。最高級の生地を使用しているため、一般的なシャツと比較しても耐久性は高いと言えます。
またトーマスメイソンが取り扱う生地は種類が豊富ですが、例えば世界三大綿と言われるエジプトの超長綿「ギザ45」や「ギザ87」、「スーピマ綿」など生地のもととなる多くの素材は劣化しにくく、毛玉に対しても強い耐性が備わっています。
そのためほとんどのトーマスメイソンのシャツは色物(濃色)と白物(淡色)は分けて洗ったり、洗濯後は放置せずになるべく早く形を整えてハンガーにかけ干すなど、基本的な手入れは必要ですが上質なシャツのため、ナチュラルに着たい際にアイロンを敢えてかけず、洗いざらしの風合いを楽しめるところも、トーマスメイソンのシャツならでは。
生地の目付(重さ)も十分で、ホームクリーニングによる縮みもあまり気にしなくていいでしょう。以下にポイントをまとめておきます。
・色物(濃色)と白物(淡色)は分けて洗う
・洗濯後は放置せずになるべく早く形を整えてハンガーにかけ出来れば日陰で干す
・色落ちや色移り防止のため塩素系漂白剤は使わない
・タンブル乾燥はなるべくしない
まとめ
トーマスメイソンの歴史をたどりながら最高級と言われるシャツ生地について御紹介してきました。良い製品を作るためにはよい原料、素材が不可欠です。素材を開発するのも、その素材を生かしたモノ作りをするのも、専門分野に対する深い探求心と情熱、職人魂があってのものです。そして、決して満足することなく時代に合わせながらアップデートを重ね続けることが歴史を作り続けることに繋がると思います。
トーマスメイソンの生地を使用しているブランドやオーダーシャツショップで220年以上の歴史あるブランドのシャツに触れ、袖を通してみてはいかがでしょうか。
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